2015年8月10日月曜日

あこがれの八ツ峰 <熊の岩へ>



はやる気持ちを押さえながら慎重にガレた踏み跡を下る。

八ツ峰を眺めること3日目。
やっとあそこへ挑むんだ。
背中に食い込む荷物の痛みさえ、心地よく思えてくる。

そうそう、3年前はひとり遅れてここを登り返したんだったなあ。






今日は熊の岩まで一気にベースをあげる計画。

八ツ峰上半を登りたいのなら、真砂沢にテントを残置して軽装アタックするほうが合理的かもしれない。労力は少なくてすむし、もしかしたら時間もセーブできるだろう。


でも僕たちがやりたかったのは、「有名ルートを一つやっつける」ということだけじゃない。40を超えたオッサンにしてはこっぱずかしい話だが、「この山に認められたい」というのが、大真面目な気持ちなのだ。いっぱしのクライマーとして、この山とがっぷり四つに組んで、果たして相手にしてもらえるレベルになったのだろうか?








お互いにこんな話をしたわけではないけれど、「八ツ峰を抜けたらそのまま本峰まで縦走して、熊の岩で祝杯をあげたいですね」ということで意見がぴったり重なった。


雪渓に出ると、ゆるやかだった雪面は徐々に傾斜を増し、ついには恐怖を感じる角度となる。うまい具合に、はらりさんが杖になりそうなダケカンバの枝を拾い上げた。まるで誰かがここに置いてくれたかのようだ。






長次郎出合でヘルメット、ピッケル、アイゼンを装着して、午後の緩んだ雪渓を喘ぎながら登り返す。
傾斜はきつくなり、背中の荷物がどんどん重さを増してくる。





上がれども上がれども、目指す熊の岩は一向に近づかない。
朝から長距離を歩いてきたはらりさんはさらにキツそうだ。


VI峰の登攀ラインが目で追える距離になると、心なしかすこし足取りが軽くなる。






熊の岩を大きく回り込んでビバーク地へ。
6張りほどの先客がいたが、うまい具合に平らな場所が空いていた。







疲れた体を引きずるようにしてテントを設営し、夕食の準備にとりかかる。

そして・・待ちに待った乾杯!!








八ツ峰の岩峰群が間近に眺められる最高のロケーション。

数日前まで、高層ビル群を眺めながら息がつまるような仕事をしていたことを考えると、夢のような時が過ぎていく。






明日はあのスカイラインに行くんだ。
源次郎のコルからここを見下ろした時は、果てしなく遠い場所に感じていたよな。


深酒に気をつけて早めの就寝。
おやすみなさい。

4 件のコメント:

  1. いいですね、男のロマンですよ!www
    ヨメはんには鼻で笑われますが、良いものはイイのだ!

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  2. 海坊主さん、そうそう山はロマンですから〜!
    人生にはこういうのが必要なんです(キリッ)

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  3. 熱い連載長編ですねー。
    引きこまれます。

    山は成果よりも想いだ、という気がしてきます。

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  4. 塾長、ありがとうございます!
    きっとまた3年経ってみたら、楽勝に感じられるようになるのかもしれませんが、山にかける想いは大切にしていたいですね。

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