翌朝は暗いうちに朝食をすませ出発。
奥大日を往復するという家族と別れて、ひとり劔御前を登り返す。
なにしろ暑いので、朝のうちに劔沢に降りてしまいたい。
劔沢に残置した装備やテントを片付け、四苦八苦しながらザックに押し込む。
はらりさんが到着するまでまだ4時間はある。
大岩の上で寝そべると、真っ青な空がまぶしくて目を細める。
遠く八ツ峰の稜線を追いかけると、いやでも源次郎尾根が目に入ってくる。
あそこで、はらりさんと人生初めてのバリエーションに挑んだのが3年前。
劔沢小屋泊まりでの源次郎尾根という、今から考えるとなんてことはない計画だったのだけれど、クライミング初心者でまだ右も左もわからない僕たちには、文字通り決死の「ビッグクライム」だった。
二人で力を合わせて成し遂げたその登頂を、肩を抱き合って喜びあったんだ。
平蔵谷を下りるところで、僕がバテてしまう。
このままでは室堂からの最終バスに間に合わない。
そこで明日の予定があるはらりさんに、先に下山してもらうようにお願いしたのだった。
「本当はkozzzzyさんと一緒に下山を喜び合いたかったけど、先に行かせてもらいます」
僕の申し出に、何度も躊躇していたはらりさん。
劔沢の登り返しで僕が全く前に進めなくなったのを見てとり、無念の決断をしてくれた。
別れ際に二人でとった写真。
自分たちにとっての挑戦の大きさ、それに費やした全ての努力を考えると、この山行には大きな達成感を感じられたはずなのに、一抹の悔しさが胸の底に苦くこびりつく。遠ざかるはらりさんの背中を見つめながら感じた何とも言えない申し訳なさ。
ちきしょう〜!!弱えなーオレ!
この3年間、重装備を担ぐたびに、あの時の自分を乗り越えたいという思いが心の中にあった。
あのときは夢のまた夢だったあの八ツ峰に、一緒に挑むチャンスがやっときたんだ。
あれからどっぷりクライミングに魅入られてしまった僕たちは、少しはクライマーと言えるレベルになっただろうか?
堅い握手をかわして、再会を喜び合う。
さて、どんな冒険が待っているのだろう。
顔、丸くないですか?
返信削除クライミングをはじめて痩せたみたいですね。昔は6番カムに負けないサイズ感を誇っていたのに。
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