2015年9月5日土曜日

北岳バットレス <まとめ>


とても内容の濃い山行でした。

山行を通じて終始冷静な視点で助けてくださったパートナーshuさんには本当に、本当に感謝!

一方で、アルパインで絶対に避けたかった怪我をしました。今回の計画はこれでよかったのか、何を読み間違えてこうなったのか、本当はどうすればよかったのか。反省がたくさん残りました。
shuさんにも家族にも多大なご心配をかけてしまいました。何より山中での怪我がこんなにも苦しく痛いものなのか、ということが身にしみてわかりました。

心配してくれた人たちには申し訳ないのですが、今のとっても正直な気持ちを言うなら「アルパイン初心者のうちに、危ない失敗を経験することができ、その代償が幸運にもこの程度ですんだなんて、本当にラッキーだった」ということでしょうか。もちろん結果論としての「行ってよかった」であって、もっとひどい結末もありえたので、今後こんなことは繰り返さない決意です。決してお勧めしません。
もし皆様の安全な山行に役立てばということで、自戒を込めつつ恥を晒します。

<行動記録>

◯9月5日


広河原   7:30
白根御池  9:35  9:40
二股   10:05 10:10
D沢出合 11:00 11:10
下部岩壁 11:40


(以下、時間は写真からの推定)
1P 12:40-14:00 (80 min) kozzzzy 離陸に時間をかけてしまいました。
2P 14:00-14:30 (30 min) shu
3P 14:30-15:10 (40 min) kozzzzy
4P 15:10-15:45 (35 min) shu
5P 15:45-16:15 (30 min) kozzzzy 本来はここまで4Pか?
6P 16:15-17:20 (65 min) shu   下核心 (V)
7P 17:20-18:20 (60 min) kozzzzy 本来は次のピッチと連結?
8P 18:20-19:15 (55 min) kozzzzy 日没
9P 19:15-20:30 (75 min) kozzzzy 上核心(V)、フォール

10P  20:30-21:00 (30 min) shu

(クライムダウン+懸垂)
上部岩壁基部 21:30頃?

登攀時間  8:50
行動時間計 14:00

◯9月6日
1P 5:00-5:25 (25 min) kozzzzy  昨日の捨て縄を回収
2P 5:25-5:45 (20 min) shu   二のコルを超えてトラバース
3P 5:45-6:10 (25 min) kozzzzy 白い岩のクラック、楽しい!
4P 6:10-6:50 (40 min) shu   マッチ箱まで。小垂壁はビビった
     6:50-7:15 (25 min) kozzzzy 懸垂1P ちょいと登り返し
5P 7:15-7:50 (35 min) shu   枯れ木テラス
6P 7:50-8:10 (20 min) kozzzzy 怖楽しいナイフリッジ
7P 8:10-8:30 (20 min) shu   短いチムニー

(休憩40分)
歩き 9:10-9:40
頂上 9:40-10:15      痛みが出はじめる
白根御池小屋  12:50-13:10 アイス食べて休足
広河原 15:30       最終バス1時間待ちでした。

登攀時間  8:50
行動時間計 10:30


<反省点>
様々な学びはありますが、なぜ怪我をしたのか、どうすれば防げるのかという一点に絞ります。

(1)計画について
行ってみたら予想以上に追い込まれた、ということは「予想の甘さ」が決定的にあったということ。

・ルート選定
下部フランケについては随分と調べていたのですが、ピラミッドフェイスについても「何となく似たようなものだろう」と考え、詳しくリスクを考えていなかった。

・時間計画
上記の話に関連して、時間についても、さくさくいけるのだろうというかなり楽観的な見通しを立てていた(1ピッチ40分で計算・・実際は1時間かけるピッチが続出)。日没ギリギリにビバーク地に到着する予定でしたが、最後に核心が来るルート構成を考えると、核心部で日没になることは十分に予想できた。それなのに途中で日没を迎えた場合のバックアッププランが何もなかった。

・コンディションの読み
降り続いた雨の影響、またアルパイン的な場所のため、岩のコンディションが悪くなる可能性があったのだが、それを軽視していた。「多少の濡れた岩はそれなりに経験があるから大丈夫」と思っていたが、岩質がチャートで、濡れると極めてフリクションが悪くなる性質があるということを考えに入れていなかった。

・プロテクション計画
ルートそのものについての一番大きな誤算は、クラックがほとんど発達しておらず、プロテクションが極めて取りづらいスラブ・フェイスだった、ということ。さらに残置ハーケンが抜けやすい状態のため、プロテクションプアだったり、部分的にはフリーソロになりうる状況だ、ということを軽視していた。

・グレード
全荷、日没、濡れ、高度の影響、プアなプロテクション・・という要素を考慮すると、V級とはいっても余裕ではなかった。もう少し一般的にいうと、アルパインは思ったより不確定要素があり、それらが全て悪い方に出た場合、かなりの余裕を持っておかないと厳しいのだとわかった。

・目標の設定
上記の様々な面における、予想の甘さに加えて、ルートを決める時の過程もどこかふわっとしていたように思う。おそらく、「下部フランケに行きたい」という当初の目標から、「全荷を背負って登攀し、登攀の途中でビバークを入れる本格的なアルパインを経験してみたい」という目標へ、無意識的に考えが変わってしまっていたように思う。そのため、目標のリスク評価や、達成可能性に対する吟味がどこかあいまいなまま、先に進んでしまったように思う。後者を目標とするなら、今回のコンディションでのピラミッドフェイスはまだ遠すぎたように思う。



(2)行動時において
計画に誤算があったことは早々にわかったため、自分の実力を上回る場所に来てしまったという認識はあったように思う。それでも自力突破にしばられ、リード交代や敗退といった策がありながら、それを取らなかったことは、最も大きな反省点だと思う。

・取り付きの準備でもたついてしまい、計画より時間を使ってしまった。スタート時点で40分遅れは痛い。

自分がいつまでも思い切れないことで時間をかけてしまい、「強いパートナーに対して僕が遅くて申し訳ない」「もう行くしかない」というプレッシャーから、リスク判断をどんどんと甘くしていったと思う。主観的な要素でリスク判断を変えてはいけなかった。

・実力を超える場合、諦めてロアーダウンして交代する手もあったが、自分で突破したいという気持ちや、夜目が効かないと言う相手に悪いなあと変な責任感を発揮したりして、「自分で突破するしかない」という追い込まれた状況を作っていた。

・時間を気にしてハーケンを打たなかった。せっかく持って行っていたのだから、ちゃんと打っておけばかえって思い切ったムーヴができて突破が早かったのかもしれない。スピードより安全をとるべきだった場面があったように思う。

・A0してでも安全に突破する方がいいか、という問いについては自分で答えがない。僕は結局、残置もほとんど無視、A0もしなかった。安全、スピード、スタイルの優先順位をどうしたいのか、というところの整理がついていない気がします。もちろん安全なんだろうけど、基準がないので、現場ごとにアドリブで判断して、ブレてしまっているように思う。

(3)墜落後について
・しばらく時間をおいて、足が動くかを確認したのはよかった。
・足首についてはアイシングはできなかったが、夜にテーピングで患部を圧迫できたことで、腫れが少なくて済んだように思う。
・下山するためにガチガチにテーピングをしたところ、痛い部分に当たっていたようで、下山中にかなりの痛みになった。行動中に無理にテーピングをしない方がよかったか。
・ストック1本はあっても良かったかもしれない。

(まとめ)
・最も大切なのは目標設定でした。目標を確認し、自分の実力と照らしてどうかを精査しないといけなかった。また計画時や山行時に、重要なことは遠慮せずに伝える、感情を排した判断をするというクセをつけることが、山で命を守る上で大切だと知りました。
・クライミングとしては、ビバークを挟んで貸切の四尾根は非常に充実しました。
・ただ正直に言って、ピラミッドフェイスはルートとしては魅力がなかったです。チャートだし、クラック部分もほとんど発達していないし、内容もちょっと無理やりつないだラインに見え、よくわからないルートでした。
・一方、実りが多かったのは、山経験です。軽装アタック、全荷を背負った登攀、3000m級でビバークを挟んでの行動ができたこと。またアルパインの持つ危険な側面が身にしみてわかったこと。経験の少ない僕にとって、この「山」部分は非常に大きな財産になりました。今後の山行の幅、自分のキャパが広がったように思います。

2 件のコメント:

  1. 改めてお疲れさまでした。自分の山行と重ね合わせて何度も読ませていただきました(レベルが違うのにすみません)。
    捻挫が回復しましたらまたジム練行きましょう。そして山談義しましょう~。

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  2. こんな駄文を読んでくれてありがとうございます。そんな、レベルだなんて、我々なんてどうせもともと大してアレですから、一緒に成長できたらいいですよね〜^^
    我慢が一週間も続くわけもなく、ついうっかりクライミングと酒を両方たしなんでしまいました。ジム練行きましょう!

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