2016年10月26日水曜日

回収というメンタルゲーム



水曜日はI塾長のお誘いで小川山でした。

(ええ、平日カードを容赦なく切っているという社会のゴミ野郎とは僕のことです)





この古き良き風景よ!
今年はホント土日の天気がダメでしたね〜。


今日はサウスポー(5.11c)を希望されていた塾長にのっかって、最高ルーフを登らせてもらうことにしました。

途中まであがってポカポカテラスへ。




この先、最高ルーフの最終ピッチから、サウスポーが分岐しています。




ルーフ下、塾長がいる右トラバースがサウスポーですね。

んで、まず塾長があっさりサウスポーを一撃!スゲー(°_°)




つづいて、僕も最高ルーフへ。




あっさり一撃!ヤター( ´ ▽ ` )ノ

気持ちよく終了点へ。


岩峰の上での〜んびり待つものの、フォローの塾長が来ない。
どうやらカムスタックしたようです。

小さな岩の窪みに座り込み、風に吹かれながら待つこと1・2時間。
徐々にTシャツの汗がひいて、震えに耐えていると、落ち込んだ様子の塾長があがってきました。


「うっうっうっ・・有名ルートに残置を残すなんてえ〜」


どうやら完全にカムスタックさせてしまったとのこと。

そんなこといいから早く防寒具をください
あ、いえ・・僕が変に決めちゃったんです。ゴメンなさい。


ルーフ下でロープが蛇行するのはわかっていたのですが、核心トラバースで大きく落ちるのが怖くて、スリングで延長しませんでした。クラックの向きとロープの引かれる方向の関係で、カムがおかしな方向に歩いたようです。




(拡大図:ロープピンピンだけど、テンションかけてないよ!w)


原因をつくった僕が言うのもおこがましいですが・・こういう場合は一旦諦めて、時間を置くとか、選手交代した方がいいですよ〜。


自分の場合、スタックが酷くなる時の心理って大体決まっている気がします。それは一刻も早く取り出したい、という「焦り」。

焦りを生むシチュエーションはいろいろあります。トライ時の疲れ、日没や雨など天候の悪化、ハング下のような姿勢が苦しい場所、相手を待たせている状況、自分が回収しないといけないという責任感や自負・・・。

回収作業はこの焦りを取り除くことが鍵じゃないか、という気すらします。
難しいカム回収って、まるで爆弾処理班のような神経戦になることがあり、ちょっと焦ると「切っちゃいけないコードを切る」ことがあるんですよね〜。

スタックさせた本人がどハマりするのに、交代した人が回収できてしまったり、取り付きに一旦降りてレストして登り返したらあっさり取れたりすることも、そんな心理が影響しているように思います。

今回の場合、塾長の方が圧倒的に経験が深いけれど、僕の方が失敗に対するプレッシャーが軽い。(塾長ができないレベルなら素人の僕ができなくても無問題だ 笑)




・・・などと偉そうなことを言って、選手交代にて回収作業に参戦したのですが。
最終的に、下からハンマー、アブミ、ユマールなどを取ってきてもらい、夕刻までかかっての回収となりました。

オイオイオイ・・選手交代した割にあまり役に立っとらへんがな〜!



この機会に、ちょっと長くなるけど回収についてのアレコレ。

今までお世話になった回収名人達を見ていると、オブザベ9割。ハンマーで叩いたりするのは、回数もインパクトも最小限だったりします。

そんなまどろっこしいことしてないで、ガンガン叩きまくればいいじゃん!


・・・とばかりに、デカいハンマーで闇雲に叩いて叩いて叩きまくり、某ヶ崎の薄暗いハング下に火花と煙が散ったという残念な過去が私にはあります(´Д` )





んじゃ、そのオブザベで何をしてるの??

僕にも詳しくはわからないのですが、回収の困難さ≒自分の限界グレード、という最もシビアなケースを想像すると、こんな感じなんじゃないかと思っています。

(ベテラン回収士の皆様は、もっとやっていることがあるのかも。ぜひ教えてください・・ m(_ _)m)


1)現状の観察
カムの4枚の歯のうち、どれがハマっているのか。動く歯はどれか。
岩の形状はどうか。近くに4枚の歯が緩む程度のちょっとした膨らみがあるのか、さらにタイトになりそうなNGゾーンがあるのか。4枚全部を緩められるエリアがなさそうなら、プラス1枚が緩むような場所はあるのか。

2)侵入経路、ヘッドの方向の変化の想像
 カムは先端方向に逃げながら、片側の歯がスタックしたところでヘッドが回っていく、そしてまた先端方向に逃げていき、詰まったら回転・・・というパターンで迷宮入りすることがあります。回転も含めて、その経路を正確に再現しないと抜き差しならない場所にハマることがある。

極めて道幅が狭い十字路で、自動車をUターンさせようと苦戦しているうち、「斜め向きになってしまい前後に抜き差しならない状況になる」ってありませんか?カムが通り抜けられる道幅は非常に狭かったりするので、似てますね〜。

3)カムの脱出経路、向きの変化のイメージ
 侵入経路を正確に逆にたどる方がいいが、クラックの形状により、別の方面から抜ける場合もある。
一枚ずつ歯を動かす場合、片側だけが動くことになるので、ヘッドは少しずつ回転することになる。この時、あまり回転させない方がいいのか、回転を利用して抜くのかをイメージする。あまり回転させたくない場合は、カムに強いテンションをかけ続けてまっすぐ方向に動くように動きを制約したり、片側ずつ交互にこじってヨチヨチ歩きさせたり。回転させる場合は、トリガーが引きにくい方向を向くことも想定して注意する。

4)カムを眺めやすい・叩きやすいポジショニング
 カムより上にいた方がいいのか、下にいた方がいいのか、どちら側から見た方が観察しやすいのか、作業の邪魔になる岩の形状があるならどっちに避けた方が作業しやすいのか、トリガーを引くには、どちらに体があった方がいい方向に引けるのか。面倒がらずに10cmでも位置を変え、必要ならアブミで楽な態勢をつくったりしながら作業した方がかえって効率がいい。

5)こじるポイント(叩くポイント)の照準
4枚のうちどの歯を動かしたいのか。ナッツキーを、歯のどの部分に当てるのがいいのか。ナッツキーの先端のどの部分を当てるといいのか。ナッツキーで押すのがいいのか、引っかけるのがいいのか、こじるのか、叩くのか。
ナッツキーをハンマーで叩く場合、ハンマーを当てる位置も、インパクトの伝わり方に関係があることがある。(ナッツキーの天辺のうち、コーナーを叩くか、中央部分を叩くか)。インパクトの邪魔になるもの(落とし止めスリングとか周囲のビナとか)は丁寧に整理しておく。


ここまでやったら満を持してこじったり叩いたり。

で、ある程度動いてきたら、また1に戻って現状確認。脱出経路をイメージし、ポジション修正・・・って感じじゃないかと思います。






かつて倉庫番ってゲームがありましたが、あれをハング下にぶら下がりながら苦しい姿勢でやっている感じが時々します。しかもゲームオーバーしたら、罰金8000円+残置という不名誉つき・・ww


普通のメンタルの持ち主だと、パートナーを待たせたり、プレッシャーのある状況で、こんな緻密な作業はできないですよね〜。


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(本日の結果)

最高ルーフ(5.10d)OS 細かく言うとサウスポーとの共通部分はFL。楽しかった!
回収作業       あんまり役に立てなかった・・

*写真はI塾長に提供いただきました。


核心トラバースの最後にある巨大チョックがグラグラ動いていて怖かったです。抜け口に立ちふさがっているので、どうしても触ってしまうのだけど。懸垂時にでも落としてしまおうかと思ったが、抜けそうで微妙に抜けないという嫌らしい感じでした。落ちたらビレイヤー直撃もありえるかも・・。


カムスタックについては、塾長の名誉のためにそっとしておこうかと思ったのですが、ご自分で暴露されているようなので書いてしまいましたw(主原因は僕だと思います)
ビレイ点での過ごし方、トライの順番や回収手順をどう調整するかなど、塾長と過ごすことができていろいろと取り組み方の勉強になりました。ありがとうございました。

2 件のコメント:

  1. ほ~ 勉強になりました。
    お二人の苦悶・苦闘する姿を想像するとそれはそれで別の…(ニヤニヤ)

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  2. ハング下に吊り下げられてヒイヒイ追い込まれているあたり、お仕置き感が半端なかったです。回収ってのも修行なんですね〜(><)

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