2015年6月20日土曜日

回収を考える(3)



さてさて、今日も楽しい回収の時間がやってきました〜。
長すぎて書いている方もなんだかわからなくなってきたけど、たぶんラストです。


前回は、ロープ長の半分を超える長いルートだと、回収方法が限られるよって話でした。
とくに「残置ギアからロープを引き抜くと、回収が難しくなる」というパターンが悩みですねえ〜。

ビレイヤーの援護を得つつ回収作業ができそうなのは、バックロープか一人登り返し(笑)。同ルート下降がどうにも不可能な形状の場合、リード&フォローの一択でしたね。


というわけで続き。
長いルートでも中間に使えそうな終了点があると、少し状況が変わるかも?というところでした。

旦那、ひとつオウンリスクでお願いしますね〜。



(パターン2)30m以上のルート(中間終了点あり)


中間終了点を無視したら、パターン1でやった回収方法(A〜D)が使えます。


さらに今回は

E)60m1本でリード。二段に分けて懸垂回収する。

という手が使えます。ビバ中間終了点!


ただ・・ですね。

この二段懸垂、かぶっていたりする形状では、前回と同じ現象が起こります。
そう、「回収ラインまで戻れなくなる」というアレです。






さらに悪いことに、1段目の懸垂では、ロープ末端がビレイヤーまで届いていないのです。つまり引いてすらもらえません。


JECCルート初回トライ時は、この二段懸垂でした。上でスリングを使い切っていたのでバックアップも取れず、空中で仮固定、あちこちスイングしながら回収。
他のプチトラブルもあったりして、それはそれは地獄の作業に・・。


これを使うくらいなら、一旦引き抜いて60m同士を連結させてから懸垂し直すCのほうがまだマシですね。ビレイヤーの労力はかかるけれど、ロープを引いてもらえる分、結果的には早そうです。(はるる様、ごめんなさい〜)


他に、ルートがそこまで長くない場合・・

F)中間支点までロアーダウン→セルフビレイを取りロープを引き抜く→中間支点経由でロープをハーネスに結び直し、再度ロアーダウン(もしくは懸垂)

ということが可能な場合があります。

(当然ですが、中間支点でロープを引き抜くときに、ロープを完全に手放してしまうと自分が残置されるので注意です)







たとえばルート全長が40m、下から25mに中間終了点がある場合なんかがこれにあたります。

小川山「ミスナチュラル」がこのパターンだったな。
これはある種の「横着」になりがちなので、末端すっぽ抜けにはくれぐれも注意したいですね。



ここまででわかることは・・(えーと・・誰かついてきてます?)
「極端にかぶったり、トラバースしているような形状のルートでは、中間支点は役に立たない」ということですね。Fのように、ロープ長の余裕がそこそこあり、かつ中間終了点がいい位置にあるパターンでしか、使う意味がなさそうです。

「ヒャッホ〜!中間支点があるからバックロープいらねー♪( ´θ`)ノ」
と単純に思った僕はバカでした。



さて、ここから話はさらにマニアックになります。

JECCルートの場合は、隣の「百獣の王」の終了点が20〜25m付近にあります。
ルート間の水平距離も考えると、Fのように中間までロアーすると、ロープが足りなくなる可能性があるので、できれば避けたい。

できるなら一発で降りたいし、リードしたロープはギアから引き抜くことなく回収したい。そしてフォローやバックロープのような労力はかけたくない。


うーん。よい方法はないものか・・・と思って、さらに考えました。

今までの方法は、1トライごとにルートをクリーンな状態に戻す、つまり、「各トライ後にギアとロープを全て回収する」というのが前提でした。


もし「ロープだけは残置してもオーケー」という風に前提を変えたらどうだろう?

というわけで、最後に行き着いたのがこの方法。


G)リードは自分のロープを終了点に結びつけて一本懸垂・ギア回収→次のクライマーは残置ロープと自分のロープで二本懸垂→ロープ回収





これは、セットの簡便さ、回収のしやすさ(カラビナからロープを抜かなくてよい)、クライマー・ビレイヤーの負担の少なさなどから、JECCルートのような場面だとかなり有効な方法だと思いました。

ただ、この方法にも留意点があります。

・支点へのロープ残置を伴う。他のパーティーもいるルートだとマナー違反ですね。
・次のクライマーにとってロープが邪魔。ただ回収困難なほどかぶっているルートなら、ロープは恐らくあさっての方向にあります。
・二本懸垂の支点は直感的に間違えにくい渡し掛けになっているが、一本懸垂は結び目に注意。失敗したら即墜落。
・一本懸垂は、二本懸垂とはフリクションが異なることに注意。
・1回で回収が完結しない。当然、何らかの手段で再び終了点に到達できることが前提。

ちなみにこのアルゴリズムは、複数人でトライしたり、二人で繰り返しトライする場合にも応用が利くのもいいところです。

1人目:自分のロープを残置して1本懸垂
 ↓
二人目以降:残置ロープを地面まで落とし、自分のロープを残置して1本懸垂
 ↓
ラスト:残置ロープとリードロープを連結して二本懸垂→ロープ回収

常に自分側のロープを残置するので、ビレイヤーの助けでギア回収を容易にすることができます。ただ毎回終了点工作を伴うので、しつこいですが懸垂支点に注意ですね。

最後はロープ回収さえできればよいので、歩いて終了点に回りこめるだとか、他のルートからたどり着けるという場合でも有効です。特殊な場合だと、終了点を共有する二本の長いルートがあって、別のクライマーがそれぞれRPトライしている場合にも使えます。


と、自分のメソッドの利点を散々語りましたが、これが役立つのはかなり特殊な場合です(笑)。



まあ、フォローの実力さえあるなら、迷ったらリード&フォローが最強だよってことですね〜。

というわけでみなさん安易な懸垂にはくれぐれも気をつけていただき、ハッピーな回収ライフを送りましょう!




4 件のコメント:

  1. 安易な懸垂をやって小川山で遭難しかかった私です。あ、別の意味で危険でした、ハイ。
    最後の方法ですが、プレッシャー感じますね。登れないとロープ残置?

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  2. 海坊主さん、そうですね〜。どの回収方法を選ぶかちゃんと考えておかないといけないのですが、終了点についたらなんとなく安易に懸垂をはじめてしまいがちなんですよね〜(反省を込めて)

    あと最後のは「ロープ残置」という割り切った作戦ですから、もちろん回収失敗したら残置ですよw
    というか海坊主さん、最後まで読んだのアナタ!!仕事してください!(笑)

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  3. なるほど~。やっと理解できました。ミズガキで塾長と話されているときには全くわかりませんでした。

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  4. cherroさん、まさか最後まで読んでくれるなんて!今度、パートナーのお猿さんと実験してみてください。
    確かにあの時は一方的に話してました。RPの興奮のあまり・・(笑)

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