2014年11月16日日曜日

海金剛トホホの巻 <スーパートリトン編>


翌日も4時起床し、薄明るくなる頃に取り付きへ。
風がずいぶん穏やかなのが嬉しい。

下降はスーパーレイン側からなので、正面壁側に回ってアプローチシューズを残置。ついでにコルから再びオブザベ。
あらためて1P目の取り付きの見当をつける。



しかし遠いなー!
崩壊ガレのアプローチはどこから行っても悪そう。
自分の中のチキン警報が反応する。

取り付きより下でロープを出す可能性をじゅんさんに伝え、ルンゼ沿いに直登。


落石を警戒して一人ずつ。

この辺からカムで支点を取れそう・・と思っていた場所よりはるか下で、すでに状態が悪い。必死でカムが取れるところまで登り、そこからロープを投げ下ろして、フォローで登ってもらうことにする。じゅんさんには、そのまま取り付きまでリードで行って支点構築をお願い。



取り付き直前、こんなんだし!コワイよー。
昨日に続いて、どうにも気持ちが負けているな。

ま、こんなところでヒヨるわけにはいかない。

ピッチ順はおまかせしますというありがたい言葉に甘えて、1ピッチ目行かせてもらいます!核心S字クラックはじゅんさんでね。

・・と思ったが。





顕著なアンダーフレークを回り込んだところでルートに迷う。

直上したいが、一手レイバック気味で上がるところがあって意外に悪そう。上がったところでクラックが消えていて、その先にルートが続いているのか定かでない。

1mくらい下をよく見ると、小さなアンダーフレークが左方向に続いていたので、そちらに降りて見ることにする。

ところが、指がかかる程度のアンダーフレークは開いているし、足場もどんどん厳しくなる。カチホールドや、小さなスタンスがボロボロと崩れては落ちていく。
カムを取れないまま随分とトラバースしたところで先を見てみると・・フレークが閉じている!

はわわわ〜。ルート外だこりゃ!
変なところ来ちゃったよ〜!

・・ということでボロボロ崩れるルートを泣きながら逆戻り。


うー。やっぱり直上かなー?
ルート図を持ってきてくれたじゅんさんに聞いてみると、今の左に行くフレークじゃないかとのこと。しかしそっちはルート外だったようだぞー。うむールート消失でもしたのか?

・・どうにも自信が持てない。
まだ1ピッチ目なのに、これ以上時間をかけるのは申し訳なさ過ぎる。

諦めて「降ります」と伝え、一つだけカムを残置。
登ってきた恐ろしいトラバースを逆にたどって、なんとかクライムダウン。




(取り付きにあった動物の骨らしき物体。いちいち コワイわ!)


じゅんさんが行ってみたいと言ってくれたので、交代お願いしたら、 サクサク突破。やはり直上でよかったのでした。

なんだよ、思い切ってレイバックの一手を出せばよかったんじゃねーかー、と自分にぶーたれましたが、後の祭り^^;

2ピッチ目はわりと明快。ハング横の快適なクラックを越え、ビレイ点上部のスラブに回り込む。

嫌らしいフィンガーを越え、樹林帯が見えたところで一旦切る。
ロープはまだあるのだけど、ビレイヤーが完全に見えないのでムーブを起こすのが 怖い。どうも今回はダメだ。いつもの自分と違うー。

今日は貸し切り、岩場に他のパーティーはいないようだ。





眼前の小島に釣り客がひとり。
なにやら金属を叩くような音が時折ひびいて、少しだけ孤独感が柔らぐ。


3P目はじゅんさんリードでS字クラックの取り付きまで。
下の弧状クラックを交代してもらったので、お願いしてこちらを担当させてもらうことに。




せめてこれくらい頑張らないと・・。
ところが核心近くでカムセットのムーブが起こせない。クラックに泥が詰まっていて、2〜3mほどフェースをランナウトで突破するのだけど、バチギキのカムが取れないと恐ろしくて突っ込めない。

核心手前まで登っては降りを繰り返しているうちに体幹がヨレ、足がもつれて外傾テラスからフォール。

ガーン。

せっかく西伊豆までやってきて、二本とも完登を逃すなんて。
じゅんさん、どんな気持ちで見てるんだろう。
申し訳なさ過ぎてパートナーの顔を見れない・・・。

ここで動揺してヨタヨタになると余計に迷惑がかかる、と思い直す。
墜ちたことをなるべく考えないように、もう一度自分を立て直す。

とりあえずテンションをもらったままバチギキカムを取り直し、意を決して核心に突入。テレポーテーションの核心によく似たシビアなクラックでした。
(あとで初登グレード5.10cと聞いて納得)

突破してみるといいルート。
核心が埋まっているのがタチ悪いが、掃除をすれば結構楽しいだろうな。

ちなみにじゅんさんはここも音速でフォロー。
うう・・じゅんさんが二人いたら問題なくいけただろうに、スマヌです(T_T)


時間がなくなってきていることもあり、この先、グレードが低いパートを行ける限りつなぐ方針に。じゅんさんは、がんがんランナウトして、厳しそうな垂直コーナークラックを3本連続で越えて行く。



ここが思ったより全然シビアで、じゅんさんの突破力に舌を巻きながらフォロー。
(最初のクラックは初登時5.10bだったらしいと聞いた。やはり・・)

次は眼前に近づいてきた上部岩壁に向けてワイドを上がる。支点が取れないスラブ状のトラバースを経てリッジを越えると、見慣れたスーパーレインの最終ピッチ。



ここはエンクラ系の快適ラインでした。

さてこの時点で15:30。日はずいぶん西に傾いている。

自分が時間をかけてしまったこともあり、「最後の1Pはスキップして、ここから懸垂して終わりにしますか?」とお伺い。


いつもは慎重派のじゅんさん。
今回、意外にも「暗くなっても懸垂はできるだろうし、トップアウトしましょうよ!」と勇ましいお言葉をいただきました。

最初に来た時は、トップアウト1時でも遅いという心配をしていたのに、俺たち成長したよな〜。たしかに、調和の幻想のことを思いだすと、もう4度目のこの下降は怖くないアルよ。ヘッデンあるし!

というわけで気合いを入れて再出発。さきほどの連続3段クラック越えで疲弊したというじゅんさんに変わってリードを担当。
素早くトップアウト後、二人で簡単に登頂を祝いました。




今回はとにかく精神的にコンディションがダメだったのが反省。

トリトンが予想外に難しいルートだったというのももちろんあるんだけど、アルパイン的な困難が予想されるこのエリアに入るにあたって、どこか自分のメンタルがふわっとしていた気がします。

じゅんさん、トリトンにおつきあいありがとうございました!
こんな体たらくで申し訳ないですが、次こそはいいところ見せますので、見捨てないでくださいね〜。頑張ります!


<以下は記録>


時間は写真記録からのおおよその推定

テント場発 5:10
取り付き  5:40
偵察、準備等
登攀開始  7:00

アプローチ 7:00-8:20 (1:20)
(A-0) ノーロープ
(A-1) kozzzzy フリーソロ、後続のみビレイ
(A-2) じゅん

取り付き 8:20
(1P) 8:20-9:30 (1:10) kozzzzy ※弧状クラック クライムダウン
(同) 9:30-10:30 (1:00) じゅん ※リード交代 OS
(2P) 10:30-11:30 (1:00) kozzzzy ※崩壊跡左〜スラブをクラック沿いに OS
(3P) 11:30-12:00 (0:30) じゅん ※上部クラック〜樹林帯 OS
(4P) 12:00-13:30 (1:30) kozzzzy ※S字クラック フォール ×
(5P) 13:30-14:45 (1:15) じゅん ※直上クラックを3段連続 OS
(6P) 14:45-15:30 (0:45) kozzzzy ※ワイド〜リッジ OS
(7P) 15:30-16:00 (0:30) kozzzzy *スーパーレイン最終ピッチ RP

懸垂下降 16:05-17:25? (4P / 1:20 ?)
アプローチ帰路 17:40-18:30 ?

(感想と反省)
・10aを舐めるべからず。自分がオンサイトで行ける限界は、フィンガー〜ハンドクラックで10b程度。10aのスーパートリトンは、少しルート状態が変わると限界を超える状態。またグレード感の甘さ・辛さにもよるゆらぎも考えると、もっとシビアなクライミングになる可能性を覚悟するべきだった。(その上で、何か対策を取るのか、それでもあえて取らないのかを判断するべき)今回は「まあ調べなくてもなんとかなるだろう」くらいの緩い 気持ちだったことは否めない。
・目的の話し合い。トリトンに対して、「ルーファイミスによる時間切れも含め、初登の感覚で冒険を楽しむつもり」でいくのか、「ルートをある程度くわしく調べてフリーとしてオンサイト狙いをする」なのかぼんやりしてしまった。パートナーと話し合ってお互い納得しておけば良かったと思う。自分は(勝手な判断で)情報を調べずに行ったのだが、やたら時間をかけて迷惑をかけてしまいました。結局、時間切れを恐れてパートナーのトポに頼ってしまったので、なんだか中途半端なこだわりになったのも申し訳ないなあ。

・弧状クラック、突っ込めなかったのはメンタルだと思うが、ダメダメなりに「最悪、戻ってこられる範囲」でルートを探ったという判断自体はよかったと思う。
・2・3ピッチ目はつないでもよかったが、かなり屈曲するため、切る判断でよかったかなと思う。
・S字クラックは完全に度胸で負けた。行ってしまえば墜ちなかったが、ガタガタの面に決めたフィンガーカムでランナウトしていく勇気が持てなかった。カムセットムーブをつくるために、カチの保持力を高めることが必要か。
・続く3段連続のクラックは精神的核心。ビレイヤーから見えないところで長いランナウトと厳しいムーブが続く。突破はじゅんさんのお陰でした。
・ピッチ切れ目でのリード交代はとてもスムーズになった気がします。今後は2ピッチ連続リードにすると、さらにスピードアップをはか れるのかな。
・懸垂下降でも成長を実感。でもせっかく塾長に教わった余分なロープを巻きつける術を忘れました・・。


というわけで、またリベンジしてやるー!というかさせてください〜^^

2 件のコメント:

  1. お疲れさまでした!2日間もマルチピッチ、しかも厳しいルート。すごいですね~。そしてじゅんさんはまたまたカッコいい!女性クライマーとして尊敬します~。

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  2. ありがとうございます!パートナーがじゅんさんでよかった〜。ホント心強かったです。(ボクが頼りなかったとも言う)
    海金剛は好ロケーションなので、またぜひ行ってみて下さいね^^

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