2014年9月24日水曜日

剱北方稜線ぶらり山旅:その4


出発間際、昨日に真砂沢であった健脚青年と三たび再会。僕より後にテント場を出て、剱沢へ荷物デポ、別山尾根を駆け上がってきたらしい。

「これはご縁がありそうだ!」ということで連絡先を交換してから出発。何度か振り返り、いつまでも見送ってくれる彼に大きく手を振る。




楽しげな喧噪から離れ、一人で荒涼とした岩砂の世界に踏み出していくのは、何とも言えない名残惜しい感じがする。浮き世との別れってこういう感じなのだろうか・・。

最初の岩峰を越え、山頂の人たちから自分が消えたことを意識する。ここからは本当に単独行。崩れがちな足下の岩に集中する。僕は浮き世に戻らなければならないのだ。


どんどん降りて行く。長次郎の頭だろうか、大きな岩峰の方からガヤガヤと人の声が聞こえる。大人数パーティーが長次郎側のラインを回り込んできている。手前のコルで少し待って入れ違う。

ルートはあえて詳しく調べなかったのだけど、思ったより危険そうだ。少しヒントがわかったのは、素直にありがたい。

彼らが来た長次郎側のトラバースは落ちたら助からなさそうだったので、ガレの多いルンゼ状をそろそろと登り詰めて突破。反対側にルートが続いてなければ懸垂支点をどうしようかと考えていたが、うまくルート上に降りる。





黄色:トラバースルート(おそらく「正規」ルート)
青色:今回のライン

池ノ谷乗越へ降りる急勾配のラインは、幸か不幸か長いフィックスがベタ張りされていた。ロープは触らないにせよ、ルーファイの楽しみがなくなってしまうのが少し残念。

池ノ谷ガリーは傾斜が緩いため、思ったより危険は感じない。単独行者とすれ違い、池ノ平山でビバークできるという話を得る。北方稜線を行くにあたり、池ノ平山までは行こうと考えていたので、最悪ビバークできる場所があるというのは貴重な情報。

ここからガスが濃くなり、時折、視界が奪われはじめる。

三の窓で大失敗。池ノ谷ガリーを過ぎた後は、三の窓雪渓側をトラバースするものだと思い込んでしまった。

チンネ側へ行く雪渓の踏み跡を途中までたどって、そこからチンネと反対側に折れ、崩壊したザレ場や岩棚をあちこち偵察を繰り返す。

諦めて戻ってきたところ、三の窓にいた別パーティーが教えてくれてラインに復帰。

ここからは小窓ノ王への急な登り返し。

振り返るとズタズタになった暗い壁が見える。
陰鬱な谷間へ急角度で落込む池ノ谷ガリー。




こいつを下って来たのか。
自分で思っているより、恐怖の感覚が麻痺して来ているのかもしれない。

この先で尾根を乗越しているうちに、稜線の概念を勘違いてしまい、逆方向へ導かれる。薄い踏み跡やケルン(!)に誘導され、ガレガレの源頭部を登り返す羽目になった。なんとか源頭部付近からトラバース気味に尾根を乗り越すと、見覚えのあるテープが・・。
まさかのリンデワンデリング!

これは濃霧の中でコンパスを確認するのをサボった自分が悪い。午前中は遠くまで見通しがよかったことで、方角を間違えるようなことはなかったのだ。

この先、短く急な雪渓を横断。気温の低い朝にカチカチの雪渓を渡ることを避けたかったので、今日中に越えられたことにひとまず安堵する。

小窓では赤谷山から縦走してきた2パーティーに会う。時間は16時30分。そろそろビバークを視野に入れなければならない。できれば今日中に池ノ平山に登ってしまいたい。この先は藪漕ぎだが、彼らからの情報では薄い踏み跡はあるという。
おそらく1時間ほどで到達するだろうと判断して進むことにした。

ところが、登山者が少ない池ノ平山稜線は、今までに増してシビア。延々と繰り返される稜線伝いの直登。



これが最後・・と思いながら、何度も何度も薮漕ぎを繰り返す。

真っ暗な山頂に見えるテントの明かりに励まされ、18時30分到着。



藪漕ぎが苦手というのは否めないが、何より赤谷山から長い薮ルートをついてやってくる猛者達の、「簡単な藪漕ぎですよ」という言葉を真に受けてはいけなかった(笑)。

ようやく到着したものの、想像と違って全く平らな場所はない。やむなく先行パーティーの隣に、斜めにテントを張らせてもらう。

まあ雪山でのテント泊を思えば楽なもの。
稜線に担ぎ上げた水は、まだ3L以上残っている。
素早く夕食をすませ、明日の準備をしてから眠りにつく。

焼酎を飲んでまどろむ。
14時間行動の疲れが心地よい。そういや、山岳会の人が、ビバーク前はヘトヘトになるまで行動するのがよいと言っていたなあ。

明日は一気に登山道を降りて、温泉巡りをするだけ。
この我慢も今日だけと思えば、大したことはないか・・

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