アストロドーム(5.11a)が人生初のイレブンクラックになりました。
夕刻、厳しい核心の後の長い長いランナウトに耐え、消耗しきった状態でのハング越え。
ワイドムーヴからハンドジャムをとるまでの1mは、自分の持っている全てを絞り切ったと思う。
降りてからは、たくさんの暖かい拍手の中、真っ先に海坊主さんと抱き合い、男同士でちょっぴり泣いちまいました。
遠い壁でした。
仕事の多忙による日程問題があり、ビレイヤー問題があり、安定しない天候がありました。何より自分自身の力の限界を越える必要がありました。
昨年4月にインディアンドール(5.10d)をRPしてから1年ですが、たった1グレードを上げる機会に、なかなか巡り会えませんでした。
帰りに立ち寄った、隠れた場所にあるフィンガーボード。この場所に通い詰め、夜を明かし、恐ろしいこの壁に毎日対峙していたという、伝説の猛者たちの思いを感じながら、崩れかかった木版に触れてみました。
きっとこれからたくさんの冒険をするだろうけれど、この日のことは忘れないと思う。
ビレイをするためだけに来てくれた海坊主さん、本当に本当に、本当にありがとう。
海坊主さんの献身的なサポートがなければ、決してなしえませんでした。
過去にビレイしてくださった、くらのK坂さん、メパンナさん、ありがとうございました。
いつも外岩で、またビッグロック日吉やジャムセッション三鷹で、クラック練習に付き合ってくれているみなさんにも大感謝です。
イシゴン塾長、全てはあなたのせいです(笑)。塾長のマルチピッチ講習がきっかけとなって、この瑞牆で自在に冒険したい、その遊びを楽しむためにはイレブンクラックを自在に登れるようになりたいと思い定め、なんとかここまでたどり着きました。
あたたかい励ましやアドバイスをくださったクライマーの方々−日登の有名人Kさん、Yさん、Tさん、JCCのSさん、くらのMさん、ジャムセッションのH内オーナー、瑞牆本にも載っているゆかりさん、取り付きにいらっしゃった沢山のクライマー−本当にありがとうございました。ちょっと大騒ぎがすぎたせいか、憧れの大先輩クライマーたちに祝福いただいて、自分のクライミング人生で最高の1日となりました。
・・・というわけで、ほとんど書いてしまったけれども(笑)、今日の記録。
ビレイヤー難民となっていた今週末。海坊主さんから、「kozzzzyの本気トライをじっくり見てみたい」という、とてもありがたいお申し出をいただきました。
海坊主さんも一緒にトライできる場所をということで、季節外れの城ヶ崎・・なんて思っていたのですが、最終的にご厚意に甘える形で末端壁まで「連行」させていただくことにあいなりました。
「わたしを満足させてくれるなら、魂を売りましょう。」っていう、クーリングオフが効かない
あの契約ですね。
メフィスト様、次は地の果てまでも付き合いまする〜!
今日は湿度も低く、末端壁は最高のコンディション。
知り合いやら、講習会やら、その他の数パーティーが入り乱れての大混雑。
アップなしで取り付いた1トライ目では、核心付近をほとんどバラしたかと思ったが、あまりのツラさに後半スタミナ切れを起こしてテンション祭り。
ヨレを取るために大レスト。
このルートは1日2トライが限界だろう。
この日に備えて持ってきたアミノバイタル、さらに手汗止めの制汗剤を投入。STさんの真似をしてザックに入れてきたTiger Tailで入念にパンプ取り。さらには海坊主さんに入念なマッサージまでしていただきました。
満を持して取り付いた2トライ目。
しかし、壁は高く遠かった。
体幹がかぶりに耐えられなくなり、前よりもひどいテン山に終わる。
もうやめようかと思ったが、気を取り直して大レスト。
時間は5時。
すでに何も残っていないと思われたが、執念の最終トライ。
直前にゆかりさんがアストロドームでクールダウンされていたので、美しいムーヴをじっくり観察して、イメージを高める。
呼吸を整えて三たび核心へ。昼には少し滑っていたシンハンドが、一転止まるように感じる。気温が少し下がったせいだろうか。
足を踏み替えてから、苦しい姿勢のまま深いキョン。甘いシンハンドの下に潜り込むように腰を持っていくことで、フリクションをごまかす。
手は、抜けない。
右足を寄せて決め直し、かぶりに耐えながら、大きなフリをつくって手を伸ばす。そう、ジャムセッションの黒テープで散々練習した、アンカーの足を支えに大きく手を出していくムーヴだ。
今まで届かなかったテラスのリップに、手が届く。
あっさりとマントルを返す。
「落ち着いてるね。行けそうだ」
というギャラリーの会話が聞こえる。
ここから第二核心。マイクロを固め打ちしてから、かぶった狭いテラスで小レストをし、思い切って立ち上がる。
フィンガーのレイバック風ムーヴをこなし、次のハンドジャムポイントでいつもどおりナッツを決める。バックアップは割愛する。長居するくらいなら30cm上のバチ効きまで上がった方がよいだろう。
「大丈夫、落ち着いている。」
自分に言い聞かせ、せりあがる。
大きなカムでプロテクションを取り、ようやく安心する。
ラスト10mを切っただろうか。
ふと下を振り返る。
墜ちたくないという気持ちとともに、もう進みたくない、早く終わらせてほしい、という弱い心が気持ちをむしばんでいく。
次第にムーヴが雑になり、思考が停止したまま、ただ上へ上へと詰めていく。
行けるだろうか。
行きたい。行くしかない。
ハング越えの組み立てを間違え、苦しい体勢に入る。
息遣いが荒くなり、思考が乱れてくる。
僕は、落ち着いていると言えるのだろうか。
振り返るとラストのカムは3〜4m下方。
いま手を離したら、後頭部から大きく振られ落ちするだろう。
ずりずりと虚しく外れていく足を絶望的に掻き、甘いジャムにすがりながらにじり上がる。全ての力が抜けていくようなワイドムーヴ。
ハングの上に上半身を出す。
足元には虚空が広がり、もうクライムダウンはできない。
全身の力を振り絞ってここを抜け、ついに終了点へクリップ。
完登!!
降りるなり、ただただ海坊主さんと抱き合う。
大騒ぎしすぎたせいか、いろんな人から盛大な拍手をいただいてしまいました。
じーん。
暖かいクライマーコミュニティーに感謝。
なにより日帰りで、ビレイのためだけに駆けつけてくれた海坊主さん、本当に本当にありがとう。次はハコヤでも三宅島でも駆けつけますからね〜!
夜は日登Kさんたちの宴会にお邪魔させていただいて、宴会を楽しませていただきました。
こんな素性のわからない飛び入りを温かく迎えてくださって大感謝です^^
例の高山植物のエリアには、小さな手づくり看板が立ててありました。
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<本日の成果>
アストロドーム(5.11a) 通算5RP 初5.11aクラック!
長い長いと思っていたけど、隣の春うらら1P目と比べると半分くらい。ほとんどの人はアップせずにいきなり本気トライ、1日1〜2便で終了していました。末端壁の1本1本は本当にヘヴィですね。